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「組織知」を見える化 マニュアルが必要な理由とその種類

組織を動かすのは仕組みです。仕組みがなければ、業務のためのツールが揃っていたとしても、組織として機能しません。また、仕組みがあっても組織内で適切に共有されていなければ、仕組み通りに行動できず存在しないのと同じ状態になってしまいます。組織が持つ仕組みを媒体に落とし込み、誰にもわかる形にしたものがマニュアルです。この記事では、マニュアルを整備する重要性や種類について見ていきます。

マニュアルとは

マニュアルとは、企業・組織、そしてそこで働く個々の従業員が蓄積してきた知識・ノウハウといった暗黙知を何らかの媒体を通じて形式知化したものといえます。しかし、明確な定義は存在せず、各社が自社なりの定義でマニュアルを作成しているのが実態です。

よく誤解されるものに、「手順書」がありますが、これは業務の手順を示して誰が業務に従事しても同じ結果になるように作成されたもので、あくまでマニュアルの一種です。手順書がマニュアルのすべてではありません。以前は、工場の流れ作業や単純作業の手順書がマニュアルとされることが多かったのですが、近年ではさまざまな業界・職種でマニュアルが使われており、マニュアルの種類も多様化しています。マニュアルの効果を高めるには、そのマニュアルの分類を把握し、対象となる読者とマニュアルの目的を明確にすることが重要です。

マニュアルの効果

目的を明確にして良質なマニュアルを作成するには、そもそもマニュアルにはどのような効果があるのかを知る必要があります。得たい効果から逆算することで、どのようなマニュアルを作ればよいかが見えてくるからです。マニュアルの効果には以下があります。

業務の内容・手順が共有化できる

マニュアルを作成することで、その業務の目的から内容・手順までを従業員と共有することができます。これは、従業員間での知識のバラつきを解消し、作業の品質を一定レベルに保つことに貢献します。作業品質が安定すれば、それに伴い商品・サービスの品質も安定します。その結果、顧客満足度の向上やミスの削減、作業の安全性向上が実現できるでしょう。また、定期的にマニュアルを更新していくことで、すでに形式知化されているものだけでなく、新たに得た知識・ノウハウの共有がタイムリーにでき、作業能力の向上にもつながります。

作業の属人化を解消できる

マニュアルがない状態では、従業員は自分なりの方法で業務を進めることになります。そうなると、成果を個人の力量に委ねることになり、品質が安定しません。有能な従業員が退職してしまえば、作業品質が一気に低下することも考えられるでしょう。内容・手順を明確にしたマニュアルを作成することで、業務の属人化を解消し、組織としての安定的なパフォーマンスを発揮することができます。

人材を教育できる

マニュアルを作成することで、その企業の方針や業務内容、手順が明確化されます。そのため、中途採用のようにバックグラウンドが異なる従業員でも、自社の業務内容・方法が理解しやすくなります。また、人材の教育には一定の時間がかかりますが、マニュアルを作ることで教育にかかる時間の短縮が可能です。これは、新卒社員のように業務経験がない従業員にもスピーディに現場の戦力になってもらえるだけでなく、教育担当の負担も減らす効果もあります。加えて、従業員の早期戦力化は教育コスト低減につながるという点も、見逃せません。

マニュアルの種類

マニュアルが持つ効果を明らかにしたところで、次に種類についても見ていきましょう。マニュアルにはどんな種類があるかを知ることで、作成目的を明らかにしやすくなります。また、同様に重要なのが、作成しようとしているマニュアルが以下のどの部分に属するか、ということです。ここを先に明らかにすることで、網羅する内容や粒度も変わってきます。

  1. 規定・規約
  2. ガイドライン・教本 ・・・ 業務・研修マニュアル
  3. 手順書・操作指示書 ・・・ 操作マニュアル・指示書

1~3を踏まえたうえで、代表的なマニュアルの種類を具体的に見ていきましょう。

業務マニュアル

上記2に属する代表的なマニュアルで、業務の目的や内容、手順、ルール、実行する際のポイントなどが記載されています。具体例としては、営業マニュアルや販売マニュアル、サービスマニュアル、接客マニュアル等です。手順に特化した作業手順書も含まれます。業務マニュアルを作成することで、業務を理解するスピードを速めることができます。チェーン店のように本部と教育すべき従業員がいる店舗が物理的に離れているケースではマニュアルは特に有効といえるでしょう。また、営業や接客の業務は属人的になりやすいため、チームビルディングを実現するには業務のマニュアル化は効果的な施策です。

研修マニュアル

これも上記2のガイドラインの1つに上げられるマニュアルです。新人研修や中堅社員研修といった従業員の段階に応じた研修や、ロジカルシンキングやコンプライアンス知識といった特定の課題についての研修を実施するために作られます。研修テキストとも呼ばれます。研修マニュアルを用意することで、教育担当者が変わっても品質を落とさずに研修を実施することが可能です。また、教育担当者向けに、研修を実施する手順を記載したマニュアルを研修マニュアルと呼ぶこともあります。

操作マニュアル・指示書

こちらは、上記3で示されている、ガイドラインからさらに一段粒度の細かい情報が網羅されたもので、設備機器やITシステムの操作方法を記載したマニュアルです。操作説明書や取扱説明書などとも呼ばれます。設備・システムは正確な操作が伴って初めてその効果を発揮します。当然のことではありますが、せっかくの設備・システムが正確に操作されないことが原因で十分に機能していないケースは、実際には多いものです。操作マニュアルはその設備・システムに疎い人材でもなるべく簡単に操作できるわかりやすさが求められます。

マニュアルの媒体

マニュアルをどの媒体で制作するかも、重要な項目となります。主にマニュアルで使用される媒体には紙、電子、動画があります。以前は紙が主流でしたが、ツールの発達とともに活用できる媒体も広がりました。一概にどれがよいというものではなく、それぞれの媒体の特徴を理解して選ぶ必要があります。自社がマニュアル化したいテーマに対して、最適な表現ができる媒体を選ぶとよいでしょう。例えば、短時間で重要点を確認できるようにしたいなら紙やWebが候補となるでしょう。また、どれか1つに絞るのではなく、組み合わせて活用しても効果的です。

紙媒体

もっとも馴染みのある媒体といえます。マニュアルは使われて初めて効果を発揮するものですので、馴染みがあって使われやすいというのは大事なポイントといえます。複数のページを閲覧しやすい、閲覧するのにパソコンやモバイル端末などの特別な機器を必要としない、といったメリットがあります。一方で、情報の検索が困難、内容の更新に手間がかかる、印刷コストがかかる、保管にスペースが必要といったデメリットもあります。

電子媒体

パソコンやモバイル端末からアクセス(または閲覧)できるマニュアルです。電子書籍のように電子マニュアルを作成する、マニュアルのための社内専用Webサイトを作る、といった方法があります。検索性に優れており、知りたい箇所をスピーディに探すことができます。

パソコンだけではなく、モバイル端末からもアクセスできるようにすることで、どこからでもマニュアルを参照できる点もメリットです。また、普段業務で使用しているOfficeツールを使って作成して共有する方法であれば、担当者の負担も少なくすむでしょう。

一方、Webサイトのような媒体で作成すると、作成に専門的なスキルが必要になり、外部業者に委託すると費用がかさみがちというデメリットもあります。

動画媒体

近年、急速に浸透したのが動画マニュアルです。前述の電子媒体同様、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末で閲覧することが多いものですが、それらの機器が発達することでストレスなく視聴できるようになりました。動画が浸透するに伴って制作コストも低価格化しています。

動画は文字の何千倍もの情報伝達力があるといわれており、使い方次第では極めて効率的に情報を浸透させることができます。特に、あいさつの仕方や設備の操作方法といった、文字だけでは表現しづらいテーマも動画ではわかりやすく伝えることができます。しかし、動画は視聴するのに一定の時間を確保する必要があり要点だけをスピーディに確認するには不向きであること、音が流れる動画では視聴に場所と時間を選ぶ必要がある、内容を改変するにはコストや時間がかかる、といったデメリットも考慮する必要があります。

媒体へのアクセスを考慮する

マニュアルを効果的に運用するには、媒体の種類と同時にマニュアルへのアクセス方法も検討する必要があります。マニュアルは利用者に閲覧してもらって初めて効果を発揮するものなので、アクセスしづらければ活用されなくなってしまいます。例えば、動画媒体はマニュアルとして有効な方法ですが、重いデータをPCやモバイル端末にダウンロードしないと閲覧できないのであれば、活用頻度は少なくなるでしょう。紙媒体も保管場所を整理しておかないと数が増えてどこに該当のマニュアルがあるかわからなくなったら本末転倒です。先にも挙げた、Officeツールで作成したマニュアルをオンラインストレージに格納して閲覧する方法は、低価格で実現できることもあり、最近よく使われています。しかし、オンラインのストレージはマニュアル閲覧用に作られているわけではありません。

オンラインでマニュアルの運用を最適化したい場合には、マニュアルの作成・運用にフォーカスして開発されたツールを使うと便利でしょう。フォルダごとの整理によって該当するマニュアルを探しやすくなっていたり、フォルダやファイルのリンクも取得できて共有もしやすかったり、といったメリットがあります。

まとめ:マニュアルによって業務の手順や知識を共有・標準化

組織力を高めるには業務を標準化して、それを組織全体に共有することが重要です。マニュアルの作成は、業務標準化と共有化はもちろん、教育期間の短縮や業務の属人化防止にも寄与します。

こうしたマニュアルの効果を最大化するためにも、自社の課題に合致するマニュアルの種類や、テーマ・利用者の特性に応じた媒体を選ぶことも大切です。マニュアルを作成して「組織知」を見える化・共有化していきましょう。

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