ISO準拠で品質管理を強化!現場で役立つ作業手順書の作り方|品質マネジメントシステムに対応した標準化...
この記事でわかること
- ISO9001等の品質マネジメントシステムに対応した作業手順書の作り方
- 作業手順書の基本的な役割と現場にもたらす効果
- マニュアルと手順書の違い、現場での使い分けポイント
- ISO要求事項を満たしながら実践できる手順書作成の具体的な流れ
ISO準拠の作業手順書の目的と効果を理解する
作業手順書は、現場の作業を誰でも同じ品質・手順で実行できるようにするための重要な道具です。人によって作業方法がバラバラだと、品質のばらつきやトラブルが起きやすくなります。特に、属人化によるノウハウの消失や、教える側の負担が増える問題も現場でよく起こります。作業手順書を用意しておくことで、こうした課題を解決でき、現場の安定と生産性向上に繋がります。
なお、マニュアルや手順書の作成は文章での作成を主体とし、動画は補助的にすることを推奨します。ISOの規格は改訂や社内手順の変更にあわせて、マニュアルや手順書も頻繁に更新が必要なため、動画だけでは更新しきれない場合があります。加えて動画は改ざんチェックや版の管理がしにくく、監査で証跡として残しづらいです。このような点から動画マニュアル・手順書はメインとしづらい面を持っています。動画は補助教材として、手順を視覚的に見せる手段として有効でしょう。
【ISO準拠の作業手順書がもたらす効果】
- ISO要求事項への適合と認証維持
(文書管理、記録管理、力量管理などの要求事項を満たせます) - 品質マネジメントシステムの継続的改善
(PDCAサイクルを回すための基盤となります) - 作業品質の均一化と標準化の実現
(ISO9001の8.5.1項「製造及びサービス提供の管理」の要求を満たします) - 新人や未経験者でもISO基準の作業が可能
(力量管理と教育訓練の要求事項にも対応できます) - 内部監査・外部審査への対応力向上
(文書化された情報として審査時の証拠となります) - トラブルや不適合の予防と是正
(リスク及び機会への取組み(6.1項)に基づく管理が可能になります) - ノウハウの文書化による技術継承
(組織の知識管理に関する要求事項を満たします)
これらの効果を踏まえて、まずは自社の品質方針やISO要求事項と照らし合わせながら、どんな目的で作業手順書が必要か確認しておくと良いでしょう。
マニュアルと手順書の違いを押さえておく
「マニュアル」と「手順書」は似ていますが、役割や内容に違いがあります。それぞれの違いを理解し、目的に応じて使い分けることで、現場の混乱を防ぎ、情報が伝わりやすくなります。
- マニュアル:業務全体の流れや背景、ルール、判断基準をまとめた資料(例:営業マニュアル、品質管理マニュアル)
- 手順書:ひとつの作業や業務に特化し、実際のやり方や注意点を詳しく記載した資料(例:契約書作成手順書、機械操作手順書)
どちらを作れば良い?選ぶ基準とは
- 全体像や業務のルール・考え方まで伝えたい場合→マニュアルが適しています。
- 具体的な作業を「誰でも同じように」進めてもらいたい場合→手順書が適しています。
このように目的に応じてどちらを作るか判断しましょう。手順書とマニュアルは補完し合う存在なので、両方を連携させて活用すると、現場力アップに効果的です。
ISO準拠の作業手順書の作成方法
ISO9001等の要求事項を満たす手順書作りは、文書管理の原則を守りながら段階的に進めることが重要です。以下、ISO規格の要求事項を踏まえた作成手順を解説します。
1. ISO要求事項と目的・適用範囲を明確にする
ISO9001では、文書化した情報には適切な識別と記述が必要です(7.5.2項)。作業手順書でも「何のために」「どこに適用するのか」を明確にすることが求められます。
- ISO9001の該当する条項番号を明記(例:8.5.1 製造及びサービス提供の管理)
- 品質方針・品質目標との関連性を明確化
- 適用範囲(部門、工程、製品など)を具体的に定義
- 関連する法規制要求事項も考慮
- 例:「ISO9001:2015 8.5.1項に基づく、○○工程の作業標準化による品質確保」
2. プロセスアプローチに基づく作業フロー分析
ISO9001はプロセスアプローチを重視しています。作業をプロセスとして捉え、インプット・アウトプット・管理指標を明確にしましょう。
- プロセスのインプット(材料、情報、前工程からの引き継ぎ)を特定
- プロセスのアウトプット(製品、次工程への引き渡し基準)を定義
- プロセスの監視・測定項目(KPI)を設定
- リスク及び機会を特定し、取組みを計画(6.1項)
- プロセス相互の関連性をフローチャートで可視化
| プロセス要素 | 内容 | ISO要求事項との関連 |
|---|---|---|
| インプット | 原材料、仕様書、前工程完了品 | 8.5.1 製造及びサービス提供の管理 |
| 活動 | 加工、組立、検査 | 8.5.1 製造及びサービス提供の管理 |
| アウトプット | 完成品、検査記録 | 8.6 製品及びサービスのリリース |
| 監視項目 | 不良率、作業時間 | 9.1.1 監視、測定、分析及び評価 |
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3. ISO文書管理要求に沿った構成設計
ISO9001の7.5.3項「文書化した情報の管理」では、文書化した情報の管理について詳細な要求事項があります。これらを満たす手順書の構成を設計します。
- 文書番号、版数、発行日、承認者を明記するヘッダー設計
- 改訂履歴表(変更内容、理由、承認者、日付)の設置
- 配布管理表(配布先、配布日、旧版回収確認)の準備
- 文書の識別性を確保(一意の文書番号体系)
- 保管期間と廃棄ルールの明記
4. 5W1H+リスク管理を意識した詳細記述
ISO9001では、変更の管理(8.5.6項)やリスク及び機会への取組み(6.1項)が要求されます。5W1Hに加えて、リスク管理の視点も組み込みましょう。
- When:作業タイミング、標準作業時間、管理限界
- Where:作業場所、使用設備、環境条件(温度・湿度など)
- Who:必要な力量・資格、教育訓練要件
- What:使用する計測器(校正状態の確認)、材料(トレーサビリティ)
- Why:品質への影響、顧客要求事項との関連
- How:作業手順、検査基準、不適合時の処置
- Risk:想定されるリスクと機会への取組み(6.1項)、変更管理(8.5.6項)
5. ISO監査に対応できる記録様式の組み込み
作業の実施記録は、ISO監査での重要な証拠となります。手順書には記録様式も含めましょう。
- チェックシート、作業日報の様式を標準化
- 記録項目:日時、作業者、ロット番号、測定値、合否判定、確認者署名
- トレーサビリティ確保のための記録連携
- 記録の保管方法と保管期間の明記
- 電子記録の場合のバックアップとアクセス管理
6. 写真・図解によるISO教育訓練への対応
ISO9001の7.2項では力量確保が要求されます。視覚的な要素を活用し、教育効果を高めましょう。
- 正しい作業方法と誤った方法の比較写真
- 計測器の読み取り方、校正ラベルの確認方法
- 品質特性に影響する重要管理点の強調表示
- 安全配慮事項、保護具着用の写真
- 不適合品の識別方法、隔離場所の明示
7. 内部監査による妥当性確認とPDCAサイクル
ISO9001の9.2項では内部監査が要求されます。手順書も監査対象として、継続的改善を図りましょう。
- 手順書の試行運用と現場からのフィードバック収集
- 内部監査チェックリストに基づく適合性評価
- 不適合や改善の機会の特定
- マネジメントレビューへのインプット
- リスクと重要度に基づき計画された間隔での見直し(9.2項に従い組織が決定)
ExcelやWordで作業手順書を作るコツ
手軽に始めやすいExcelやWordでも、少し工夫することで現場に合った手順書を作れます。特徴や注意点をまとめておきます。
Excelで作業手順書を作る場合
Excelは表形式で情報を整理できるのが強みです。
- ヘッダー/フッターに文書管理情報を設定(文書番号、版数、ページ番号)
- 改訂履歴シートを別途作成し、変更管理を徹底
- セルの保護機能で重要項目の誤変更を防止
- 条件付き書式で管理限界値の逸脱を視覚化
- データ入力規則で入力ミスを防止
| 項目 | 内容 | チェック |
|---|---|---|
| 道具準備 | 必要な道具をそろえる | |
| 操作1 | スイッチを入れる | |
| 操作2 | 設定値を確認 | |
| 終了 | 片付け、清掃 |
ISO 9001対応のチェックリスト例
| 項目 | 内容 | チェック |
|---|---|---|
| 文書番号 | 例:WI-XX-001 | |
| 改訂履歴 | Rev.1 → Rev.2 など | |
| 承認印 | 作成・確認・承認者印 | |
| レビュー日 | 20XX/07/31 |
Wordで作業手順書を作る場合
Wordは説明文や写真を自由に配置できるので、複雑な作業や図解が多い手順書に向いています。
- 「見出し」や「本文」などスタイル機能で統一感を出す
- テンプレートで自社用の書式を決めておく
- 目次機能で長い手順書もすぐに目的の場所へジャンプできる
- 画像や図を多く使いたい場合はWordが便利
ISO認証機関推奨のテンプレート活用
多くのISO認証機関や品質管理団体が、規格適合のテンプレートを提供しています。
- JQA(日本品質保証機構)等の認証機関サイトを確認
- 業界団体のISO推進委員会が提供する業種別テンプレート
- ISO9001:2015対応の文書管理番号体系
- 必須項目が網羅されたチェックリスト付きテンプレート
製造業の現場で押さえたいポイント
現場での安全と品質確保が特に重視される業界では、手順書の内容と管理が非常に重要です。
現場で活用される手順書の特徴
- 簡潔で直接的な言葉を使い、誰でも理解できる
- 一つの動作ごとに区切り、冗長な説明を避ける
- 写真や図、フローチャートを多用し、一目で分かるように工夫
- 危険箇所や注意ポイントは色や記号で強調
現場の声や改善点を積極的に反映する
- 実際に作業している人から意見を集めて手順書に反映
- 分かりづらい・現場と合わない部分はすぐに改善
- 定期的な見直しとフィードバックの仕組みを作る
AIツールを使って作業手順書作成を効率化する
近年はAIやクラウドの活用で、手順書作成や運用の効率が大きく向上しています。現場でより使いやすい手順書を目指すなら、こうした新しいツールの活用もおすすめです。
AI活用でできること
- 動画をアップロードするだけで手順書を自動作成できる
- AIによる自動字幕や多言語翻訳でグローバルな現場にも対応
- クラウドで最新版を常に共有、検索や管理も簡単
おすすめAIマニュアルツール例
- 動画から自動で手順化するサービス
- COCOMITEのように、動画・画像・テキストを一括で管理できるプラットフォーム
- AIチャットで手順や校正のアドバイスも受けられる
| 比較項目 | Excel/Word管理 | COCOMITE利用 |
|---|---|---|
| 版管理 | 手動・混乱しやすい | 自動・常に最新版 |
| 共有 | PC前提、制限あり | クラウド、どこでもOK |
| 視覚情報 | 画像・動画は重くなりやすい | 動画・画像もスムーズ |
| 検索性 | ファイル横断は困難 | 強力なキーワード検索 |
ISO準拠の作業手順書で品質管理体制を強化しよう
ISO9001等の品質マネジメントシステムに準拠した作業手順書は、単なる認証維持のためだけでなく、組織の品質向上と競争力強化の基盤となります。
- ISO要求事項を正しく理解し、手順書に反映する
- 文書管理、版管理、承認フローを確実に実施する
- 現場の声を取り入れながら継続的改善を進める
- 内部監査を活用してPDCAサイクルを回す
- AIツールやクラウドサービスで管理負荷を軽減する
特に重要なのは、ISO規格の形式的な要求を満たすだけでなく、現場で本当に使われ、品質向上に貢献する手順書を作ることです。規格適合性と現場での使いやすさのバランスを取りながら、組織に最適な手順書体系を構築していきましょう。
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