【保存版】失敗しないマニュアルの作り方。押さえておきたい3つのステップ
マニュアル作りは正しく進めることができれば、業務プロセスの標準化による業務効率化やベストプラクティスの浸透による成果の最大化、教育負担の軽減などのさまざまな効果をもたらします。しかし、失敗してしまうと、これらの効果をもたらさないばかりか、活用もされなくなってしまうでしょう。投資したコストや資源を無駄にしないためにも、正しいステップに沿ったマニュアル作りが欠かせません。この記事では、効果的なマニュアルの作り方について解説していきます。
マニュアル作りの全体フロー
マニュアルの効果的な作り方をステップに分けると、企画、作成、更新・改善の3つになります。
「企画」のステップで作成するマニュアルのテーマや目的を決め、「作成」のステップで企画に沿って実際に作り上げていきます。さらに、そのマニュアルが企画のステップで定めた目的通りに機能しているかをチェックし、必要に応じて改善していくために「更新・改善」のステップを踏むことになります。
これらのステップのどれが欠けても、効果的なマニュアルは作成できません。企画段階で利用シーンを想定していなければ出来上がったマニュアルは現場で使われないでしょう。あるいは、企画で要素をもれなく検討できても出来上がったマニュアルが見にくいものであれば、やはり活用されません。同様に、更新・改善をしなければ、マニュアルは古くなっていき現場の実態にあわないものになってしまいます。
また、マニュアルと一口にいっても、業務マニュアルや操作マニュアル、教育マニュアルとその種類は多彩です。作成に携わる人材も複数になり、時に部署を横断して作成するケースも発生します。作り方を各ステップに分けて明確にし、作成作業の混乱を防ぐことが必要です。
目的通りのマニュアルを作るための「企画」ステップ
効果的なマニュアルを作成できるかどうかは、この「企画」ステップを十分に検討できるかどうかが鍵となります。企画段階で検討要素に不備があると、間違ったものの作成に時間や人材を投資することになります。効果的なマニュアルの作り方というと、テキストや視覚効果といった作成ステップにばかり目がいきがちですが、企画ステップで自社にとって最適なマニュアルの姿を明確にするようにしましょう。
企画ステップで検討すべき要素は以下になります。
そのマニュアルの目的(何のためのマニュアルなのか)
何のためにマニュアルを作るのか、その目的を明らかにしましょう。現場でスピーディに要点を確認できる作業手順書を作りたい場合と、新人に業務の手順だけでなくその目的や価値、組織体系などの業務全体を教育したい場合では作るべきマニュアルは異なります。特に、目的を盛り込みすぎることには注意しましょう。
利用者と利用シーン
マニュアルは利用されて初めて効果を発揮します。そのため、利用者の対象やレベルと利用シーンを想定することが重要です。利用者の対象やレベルとは、対象者の職種や業務、知識レベルや保有資格です。また利用シーンとはマニュアルのTPOを明らかにすることです。「Time:どんな時に」「Place:どんな場所で」「Occasion:どんな状況で」、これらの視点を明らかにすることでマニュアルの精度が高くなります。
情報収集(マニュアルに盛り込む具体的な内容を定める)
マニュアルの目的と利用者・利用シーンを踏まえ、情報収集をしていきましょう。盛り込むべき内容を決めていくためです。利用者はもちろん、その部門の管理者にもインタビューしていきます。外から見た現場の課題と、現場の実態には距離があることが往々にしてあります。現場の情報を収集せずに内容を決めてしまうと実態にそぐわないものになりがちです。
情報収集をした結果は、業務一覧表の中で大中小という分類で整理し、重要度や利用頻度の観点でマニュアル化の優先順位を決めるのも有益です。また複数の部門やシステムをまたがって進行する業務プロセスの場合には、情報の入出力と責任分界点を明確化するために業務フローを整理することも効果的です。
媒体(紙媒体や動画など)
マニュアルの効果を高めるには、媒体選びも重要になります。利用者にとって、もっともアクセスしやすい媒体を選ぶようにしましょう。
近年は技術の発達により、さまざまな媒体を選べるようになりました。従来の紙媒体に加えて、動画やWebサイト、電子マニュアルなどがあります。若い人が多いのかどうか、といった利用者の世代を考慮して考えてもよいでしょう。また、利用者と媒体の親和性だけでなく、盛り込む内容を適切に表現できるかも大切です。あいさつや言葉遣いといったマナーを伝えるマニュアルの場合、テキストよりも動画のほうが伝わりやすいでしょう。一方、作業手順の要点をスピーディに確認するマニュアルの場合、紙やWebサイトのほうが閲覧しやすいといえます。
作成体制とスケジュールの決定
誰が、いつまでに作成するのか、作成体制とスケジュールを明確にしておきましょう。複数人でマニュアルを作成していく場合は、各担当者の役割も明確化しておくことが大切です。
企画内容を形にする「作成」ステップ
企画内容が定まったら、それを形にする作成のステップに入ります。
まず、マニュアル全体の構成を検討することが大切です。全体の構成が見えていないまま作成に入ると、作成が進めづらいだけでなく、重要な箇所の説明量が少なかったり、書きやすいテーマに文量が偏ってしまったり、目的通りのマニュアルが作成しにくくなります。この構成は、最終的にはマニュアルの目次になります。マニュアルに目次がないと、検索性が低下し、読まれない要因となるので、目次を入れることは重要です。
また、この「わかりやすさ」は、いうまでもなくマニュアルの本文でも重要です。読む人によって解釈に違いが出ることを避けるため、なるべく平易な文章で簡潔にまとめることを心がけます。加えて、テーマにもよりますが、なるべく図やイラストを使うと、内容を理解しやすくなります。企画ステップの媒体選びもわかりやすさに直結するので、わかりやすい表現がしにくいと感じたら、媒体選びも再度検討するようにしましょう。
上記は自社で作成することを想定して説明してきましたが、作成を外部に委託する場合もポイントは変わりません。この場合も、企画ステップはもちろん、全体の構成を決めるまでは自社内で完結するのがおすすめです。また、マニュアルの目的や利用者・利用シーンといった企画を外部に十分に説明しておくことで、出来上がりのブレを防止できます。
マニュアルの精度を高める「更新・改善」ステップ
「更新・改善」は見落としがちなステップといえます。作成側からすると、マニュアルを完成できたことで満足してしまうためかもしれません。しかし、マニュアルは一度作成すればそれで終わりではなく、利用状況をチェックし、必要に応じて更新・改善を重ねていく必要があります。
事前にどれだけ情報を集めても、実際に現場で運用してみたら実態にそぐわない箇所は出てくるものです。また、作成から時間が経過すると、マニュアルに盛り込みたい新たな知識があったり、業務のやり方が変わったりすることもあるでしょう。このステップで、マニュアルの「鮮度」を維持していきましょう。
更新・改善をスムーズに進めるには、どのタイミングで運用状況を確認するかを決めておくとよいでしょう。マニュアルのテーマにもよりますが、1か月から半年以内に状況をチェックし、問題があればマニュアルをリニューアルします。作成直後は早めにチェックポイントを設けることがおすすめです。
まとめ:マニュアルの作り方をマニュアル化しよう
マニュアル作りは、時間、人材、費用と決して少なくない投資を必要とします。多くの投資をしたにもかかわらず活用されなければ、その投資が無駄になってしまいます。活用され、成果を生み出すマニュアルを作るには、この記事で紹介したような「企画、作成、更新・改善」の明確なステップに沿うことが大切です。作り方のステップを明確にすることで、作業に無駄がなくなり、必要な要素をもれなくカバーできるでしょう。