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製造業における作業手順書はどう作る?作成の目的や手順、ポイントを解説

製造業では、さまざまな製品を同じ品質で生産しなければなりませんが、それを作る現場の従業員は当然1人ではありません。そこで問題となるのが、「正しい作業手順をどのように伝えるのか」です。その際、作業手順を適切にまとめた作業手順書を作成すれば、製品を作ったり組み立てたりするためのステップを確実に伝えていけるでしょう。業務の負荷軽減や標準化に役立つ作業手順書について、解説します。

製造業で作業手順書を作る理由と目的

なぜ製造業に作業手順書が必要なのでしょう。その理由と目的について見ていきます。

製品の品質を保つため

製造業でもっとも重要な指標の1つは、製品の品質のバラツキや不良をいかに少なくするかです。品質を保ちながらも進めやすい手順を整理し、作業手順書を作成し従業員に共有すれば、一定の品質を保つ製造が可能になるのです。
もし品質問題が発生した場合には、製造時期に使用されていた装置、材料、手順などの原因調査が発生することもあり、マニュアルの公開管理、承認管理も重要となります。

作業手順を確実に確認するため

特に製造ラインでは、同じ作業を繰り返す場合も多いため、業務を覚えやすいものです。しかし、慣れがあったとしても、人間である以上漏れや抜けはどうしても出てきてしまいます。また、ほかの業務と並行したり長い休みのあとだったりした場合、業務を忘れてしまう場合があるでしょう。
こうした場面でも、手順をまとめた作業手順書があれば、見て読み返すだけで確認できます。「ここはこの手順であっていたか」と、不安になったときにも便利でしょう。

新人教育に役立てるため

作業手順書があれば、新人教育にも役立ちます。
もし、作業手順書がなければ、教育担当によって説明が変わったり、その説明に不備があったりするかもしれません。それにより、「必ず守らなければならない規定」や「守らないと危険が生じる事柄」が伝わらなくなる可能性もあります。作業手順書はこうした事態を防ぐ助けになるほか、新人教育の担当者が実際にやってみせたりする場面でも活用できます。

属人化を防いで標準化するため

「この業務はAさんしかわからない」といったように業務が属人化している場合、その業務については誰もがAさんに教わらなければなりません。そうなるとAさんの業務は進まなくなり、工程がストップしてしまうでしょう。また、Aさんが休んだり辞めたりすると、最悪その業務ができなくなってしまいます。作業手順書は、属人化を防いで業務を標準化することにも貢献できるのです。

書面で残してさまざまな人に技術を承継する

現場の業務は、もちろん実際に進めないと身につかないものもあるでしょう。しかし、書面に残してあれば、読むだけで一定の手順を理解することができます。これは、教育を受ける側は自分のペースで読みながら理解でき、教育担当者もその場に立ち会って教える負担を減らすことができるというメリットを生み出します。これにより、さまざまな人に技術承継していけるでしょう。技術継承については、生成AI×インタビュー×マニュアルで「熟練技能伝承の短縮化」を目指した実証実験の取り組みも合わせてご参照ください。

作業手順書を作るステップと記載する内容

ここからは、作業手順書を作るステップと記載する内容について、見ていきます。

ヒアリング

実際に製造に携わっている担当者から、以下のような内容をヒアリングします。

  • 現在、どのような手順で作業しているのか
  • 誰が作業手順書の承認者に該当するのか
  • 作業中によく起こるミスは何か
  • 現在の作業手順で良いと感じる点

詳細に聴き取るほど、その内容を作業手順書の作成に活用できます。また、聴き取りながら不明な点は「なぜそうしているのか」「いつから決まっているのか」など質問していきましょう。その回答も作業手順書の内容に生かせます。

目的や必要な規定を明らかにする

作業手順書を何のために作るのか、作業手順書に必要な規定は何かを明らかにします。例えば、次のような内容です。

  • 作業手順書作成の目的
    作業手順書の作成によって、どういった業務を確実にしていくのか、その目的をはっきりさせます。
  • 遵守すべき法律や規格
    法令やJIS、業界団体の規格など、必ず守らなければならない事項を洗い出します。また、洗い出すだけでなく、「ここは必ずこのように作る」と定められている点もともに明らかにしましょう。
  • 顧客からの要望や指摘された内容
    現在や過去に顧客から受けた要望や指摘です。こうした情報は、必ずしも広く共有されているとは限りません。例えば、担当者のパソコンにだけ情報が入っていたり、紙の書類にまとめられて倉庫の奥に眠っていたりするかもしれないからです。こうした情報をできるだけ探して盛り込めると、より良い作業手順書になります。
  • 作業の際に気をつけるポイント
    製造する部材によっては、曲がりやすかったりもろかったりといった特性を持つものもあるでしょう。また、「製造時に力の設定を間違えるとヒビが入る」といった製造上の注意点もあります。こうしたさまざまなリスクを洗い出すのです。

作業手順の書き出し

ヒアリングした内容と明らかにした内容をもとに、作業手順を書き出します。ここではざっと書き出すだけにとどめ、手順としてまとめるのはあとにしましょう。
また、内容に漏れや抜けが出てしまう可能性もあります。ヒアリングや洗い出した内容をチェックリスト形式にしておくとよいでしょう。それにより書き漏れを防ぎます。

作業手順の並べ替え

書き出した内容を、手順どおりに並べ替えます。この際には、規定を満たし、同時に作業効率の良い手順になるよう気をつけましょう。

作業が確実に進むよう「補足情報」を盛り込む

作業手順書の内容は、すべてをテキストで書くのではなく、フロー図やグラフなどの挿絵も適宜活用するようにしましょう。
細かな組み立ての場合には順番を記載した図解を掲載したり、一見しただけでは手順がわかりにくいパーツの場合には「ここにAがある」のように番号やメモを記載した写真を掲載したりして、視覚情報を盛り込みます。「目で見てわかる」情報で補足がなされると、間違いを防ぎながら作業を確実に進められます。

完成品の画像や図を付けくわえる

完成図がないと、これで正しいのかと毎回誰かに確認する状況になりかねません。それでは時間もかかるうえ、作業が進まなくなってしまうでしょう。
作業手順書には完成品の画像や図も追加しておくことで、誰もが作業が完了した状態を確認でき、不良品の発生を防ぐことにもつながります。

製造業で作業手順書を作るときのポイント4つ

最後に、製造業で作業手順書を作るときのポイントを4つ見ていきます。

作業手順書はこまめにアップデートする

作業手順書は一度作成して終わりではありません。規定や情報が更新されたり何かミスが起こったりしたらすぐにアップデートして、作業手順書を最新版にしましょう。
特に、何かミスがあった際の情報は重要です。「Aの部分の製造工程でBのようなミスがあったため、Cを徹底」のように今後の改善に生かせる内容が盛り込めます。

満たすべき規定や要求、目的ははっきりと

注意事項については、「作業手順と別の欄に書く」「フォントを変える」「色付けやマーカーでラインを引く」といったように、必要な部分を明確に示します。作業手順と同じ欄で同じ形式で書いてしまうと、注意事項として目に留まりにくくなります。
作業の際、誰もが意識できるよう、満たすべき規定や要求、目的ははっきりとわかりやすく記載しましょう。

小規模なバージョンを作成して運用

最初に作業手順書を作成する際には、まず小規模なバージョンから始めるのが、おすすめです。大規模なラインと異なり、関係する人数が少なければ、改訂の際も影響を限定でき、スムーズに進みます。
ここから、「Aという手順の説明がわかりにくい」「Cという手順の説明が間違っている」といった内容の反映もしやすくなります。

目に見える場所にも貼り出す

作業手順書と聞くと、「どこかに置かれたマニュアル」をイメージするかもしれません。しかし、作業手順書は、可能な限り目に見える場所に貼り出しましょう。作業中、壁を見るだけで確認できるようにすれば、いちいち作業手順書を探さずにすむからです。
また、これにより「作業中、機械を止めずに離席したら不良品ができていた」「手順を間違えてしまった」といった不注意によるミスも減らせます。現場の作業者に、作業手順や注意点などを効果的に啓蒙できるのです。

製造業で作業手順書を作れば多くのメリットが!

作業手順書は、業務を標準化し、製品の品質担保を目的に作られます。そして、ほかにも業務効率化や技術承継、教育コストの軽減など多くのメリットをもたらします。安定して良い製品を作り続けるためにも、ぜひ製造業における作業手順書の作成にトライしてみてはいかがでしょうか。

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